フェンリル俯瞰図(仮)

 当面はRagnarokOnlineについて書いていきます。  もしかしたらそのうち他方面も扱うかも。

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黄昏れ時の彼らに祝福を 第三話 -惹きつけるもの、られるもの-




 見慣れた首都の南門、見慣れた大通りの人々の喧騒。
 普段から露店商人やAFK商人やBOT商人がひしめき合っているプロンテラの露店街を、普段とは少し違った気持ちを抱きながら、私は歩いていた。
 今日は5月28日――そう、後にケイオスデモと呼ばれる事になる、ユーザー主導の大規模抗議デモの開催日なのだ。
 ここに来れば「監査委員会」の人達にも、きっと会える。そして、「あの人」の正体を確かめることも、きっと…。
「会えるかな…「あの人」に…」





黄昏れ時の彼らに祝福を 第三話 -惹きつけるもの、られるもの-


 私は元々、どちらかといえば事なかれ主義のタイプのプレイヤーだった。そりゃぁまぁ、ぼったぁやちぃたぁは大嫌いだったけれど、その為に何かしらの行動を起こそうだなんていう考えは、少しも湧いてはこなかった。
 一応BOTNEWSはチェックしていたけれど、管理人の書く記事はともかく、そこに群がる乳児達の罵りあいは好きではなかったので、そういうモノから身を離すようにもしていたんだと思う。
 そんな私だから、最近連日のように更新される抗議活動に関する記事を見ても、
「頑張ってる人もいるんだぁ…凄いなぁ…」
 ぐらいにしか思わなかった。
 元々私は数週間前から、リアル事情でROを休止しており、私自身ROに対する熱が冷めかかっていた事もあったんだと思う。
 だけど、「この日」に私が見た記事は、いつも記事を流し読みしていた私の目から、流れ落ちずに引っかかった。

『RO監査委員会設立、プレイヤーの抗議活動開始 』

 ROの現状と管理会社の有様に業を煮やしたユーザーが、鯖の壁を越えて団結し、抗議組織を立ち上げていたのだそうだ。
 そして明日(日付的には、既に今日になっていたけれど)、監査委員会の主導の下、Chaos鯖でデモ活動が行われるのだという。
 既に幾つかの鯖では集会が開かれ、先日Forsety鯖では先行デモが行われたとのこと。
 委員会のサイトも既に立ち上がっており、集会や先行デモの様子もそこで見ることができた。

「とうとう本格的な組織が出てきたのか…」
 いつもと違った事の運びが少し気になったが、私の目に留まったのは、記事からリンクが張られていた委員会の本部及び各支部のサイト、そこに載せられていたSSやチャットログだ。
 それによると、この監査委員会の委員長と呼ばれる人物は、Thor鯖の出身らしい。…Thorといえば、私がメインで活動している鯖だ。
「へぇ、ウチの鯖の人が…って、ん!?」
 さらにSSやチャットログをよく読んでみて、驚いた。
 監査委員長と名前が修正されたこの人物…ひょっとして、私の知り合いなんじゃないか?
 チャットログを確認すると、委員長は昔、Choas鯖で活動していたものの、一度RO
を引退し、つい最近Thor鯖に帰って来たのだという。
 そして、Thor決起集会のSSに写っている委員長らしき人物の姿は、♀ケミ・商人デフォ金髪・ウサミミ・リーフ連れ…。
 それは、私の知っているある人物と、全て特徴が一致していたのだ。
「……………まさか、ねぇ」



 これは、つい最近の出来事。
 溜まり場のメンバーも低接続になって久しく、私自身もROに少々物足りなさを感じていた頃、ちょっとした刺激欲しさに、自キャラのケミを一人、ケミ専用ギルドに入れることにしたのだ。
 今まで溜まり場メンバーのギルドにしか入ったことがなく、彼らと一緒にいる時以外は大抵ソロだった私にとって、全然知らない人たちのギルドに行くのは新鮮な冒険だった。
 幸いなことに私を拾ってくれたケミギルドの人たちは皆いいひとで、私の電波トークにも付き合ってくれる優しい人達だった。
そして私の所属したケミギルドには、似たようなケミ専用の同盟ギルドがいくつかあった。その中の一つに、「あの人」はいた。

 私とあの人が初めて会ったのは、ログイン中の同盟ギルド同士数名で集まって、溜まり場でも決めよっかー、みたいな話をしていた時だったと思う。
 首都の片隅に座り込んで、何てことない雑談に華を咲かせていた。
 時間も遅くなり、他のメンツが次々とログアウトしたり狩りに出かける中、偶然にもその場に残った最後の二人が私と「あの人」だった。
 なんとなーく話があって、なんとなーく私達は二人で話しこんだんだけれど、言葉や雰囲気から滲み出る友好的な人柄が、金髪のリーフ連れケミの姿、そして昔Chaosにいて最近Thorに戻ってきたというエピソードと共に、私の記憶に深く刻み込まれていた。
 …よくよく考えてみれば、私と「あの人」がまともに会話をしたのは、これを含めて2~3回くらいだったような気がするんだけど、それでもハッキリ覚えていたんだから、よっぽど強く印象づけられていたんだろう。
 その後すぐ、私はリアル事情によってしばらくの間ROを休止していたのだけれど…。
「………」
 今、「あの人」が、「RO監査委員会」の「委員長」という名を背負って、立ち上がろうとしている…? 
 委員長=「あの人」だという私の推測は、ほぼ100%に近かった。でも実際に自分で見てみなければ、確証は得られない。
 私は「監査委員長」に会う為、Chaosデモに参加することを決意したのだった。


 私のデモ参加を後押ししたものは、実はもう一つある。
 それは、一本のプロレス動画。
 一体どうやって作られたものなのか、最初は想像も付かなかった。
 なんせ、普段見慣れた2DのROのキャラがそのまんま3Dになって、プロレスリングの上で所狭しと暴れまわっていたのだから!

 リングの上では、二人のローグ…いや、一人と一体のローグが戦っていた。一方は肉入り、もう一方は…BOTのローグだ。
 ローグはアイテム収集が得意という職業の性質上、BOTとして利用されることが大変多い。その為、ローグに対し悪いイメージを持っているユーザーも少なくなく、そんな偏見を吹き飛ばす為、ある一人の肉入りローグが立ち上がり、憎きBOTローグをぶちのめす…そんな内容の動画だった。
 軽快なロックソングにのせて、肉入りローグがBOTを叩きのめしていく。その姿は痛快でそして爽快で、私の胸は心地いい高揚感で震えた。
 実は私も自キャラに一人ローグがいて、そいつがちょいと紛らわしい名前をしているのだ。そのせいかどうかはわからないけど、妙な事を言われたことも少しある。
 だからローグに対する偏見を持つ人がいることも知っていたし、もたれた側のローグの気持ちもわかる。
 そんな私にとって、リングの上でBOTを叩きのめす肉入りローグは、とてもカッコイイヒーローのように見えたのだ。
 私は何度も何度もその動画を繰り返し再生した。
 その度に気分を高められ、私はロックソングの勢いに背中を押されるように、余っていた1DAYチケットを削り、Chaos鯖に降り立ち、プロンテラの南門をくぐり抜けた――。




   ─wwヘ√レvv~(゚∀゚)─wwヘ√レvv~──wwヘ√レvv~(゚∀゚)─wwヘ√レvv~─




 人、人、人――!前を向いても横を向いても後ろを向いても人人人!しかも大半がノビ!何ですかこの異常事態!?
「見ろ!人がゴミのようだ!」なんて、余裕ぶっこいていられない。今は間違いなく、私もそのゴミの中の一つなんだから。
 デモ開始予定時刻からまだ数分。にもかかわらず、デモ会場である噴水広場周辺は、大量の参加者によってごった返しになっていた。
 今現在もリアルタイムで増え続けていく怒れるユーザー達は、各々の主張をチャット看板に書きなぐり、掲げている。中にはお前それ全然関係ないだろ何しにここに来たんだよって突っ込みたくなるような文章の看板もチラホラ見受けられたが、9割上は管理会社や不正行為者への意見や主張や罵りだ。
 BOTNEWSのデモ実況記事によれば、開始時刻前から集まってきている人もいたのだという。
 元々首都は、人が多いことで有名な場所ではあるが…今までROをやっていて、ここまで人が密集した場面というのを私は見たことがない。
 現実世界で例えるならば、オタクの戦場・コミケ会場にも匹敵するほどの人口密度だろう。…実際に行ったことはないけれど。

 それにしても、こんな状況で「委員長」を見つけるのは困難極まりない。
 会場は人で溢れているだけでなく、ほぼ同じ数だけのチャット看板が立てられているのだ。さらにはオープンで発言している人もいるし、たまに愉快犯かはたまた妨害者か、枝テロを起こす輩もいるわで、会場はまさに混沌を極めている。
 はたしてこの惨状の中から、どうやってたった一人の人間を見つければいいのか…。

 ……とか思ってたら、私はあっさり委員長を見つけた。
「チャットの看板が重ならないように並んでくださーい!」
「管理会社を揶揄する表現はなるべく使わないようお願いしまーす!」
「枝の使用は禁止しております、ご了承くださーい!」
 委員長は会場の真ん中で、他の委員会のメンバー達と一緒に、オープン発言で必死にデモ参加者達を誘導していた。
 このゲームでは発言の横に名前が表示されるので、監査委員長という名を冠したキャラを、私はすぐに見つけることができた。
 しかし、声は聞こえど姿は見えず。この人ごみの中ではハッキリと姿を確認することができない。
 …まぁ、とりあえずこの場にいることはわかった。こんな状況の中じゃ声をかけるのも迷惑になりそうだったので、とりあえずこの場は私も一人の参加者としてデモの列に加わることにした。「確かめる」のは、場が落ち着いてからでもいい。
 私は「管理会社の改善又は変更求む」という看板を立て、しばらくそのまま座っていたのだけど、それにしても見事にやる事がなくて暇だ。
 チャットを立てると周りのオープン発言も聞こえなくなるし、このまま会場の様子を眺めていても仕方がないので、私はPCを凝視しすぎた目を休める為、少しの間仮眠をとることにした。

 ――その頃、既にデモの列は、噴水広場から溢れ出し、北の遊行広場周辺にまで達していた。



                (=・ω・=)



 私が目を覚ましたのは、ちょうどデモの終了時刻を少し過ぎた頃だった。とはいえまだその場に残っている参加者の数も多く、数名の関係者らしき人が、
「デモは終了しましたー、チャットを閉じてくださーい、ご協力ありがとうございましたー」と叫んでいた。
 その中に、委員長の姿は…ない。既にこの場にはいないようだ。
 だが私は慌てない。委員会の人たちがどこへ行ったのか、粗方予想はついている。
 確かいつぞやの決起集会のSSに、プロンテラ東のゴキ森マップが写っていた。
 彼らはデモが終わった今、どこかに集まって反省会を開いていることだろう。そしてその場所は、デモ会場から最も近い、プロ東のゴキ森マップである可能性が一番高い。
 ――反省会の現場に突撃して、事の真相を確かめてやる!――
 私はAFKのまま放置してしまっていると思われるチャット看板一つ一つに、デモ終了の告知を書き込んだあと、会場から東のゴキ森マップへと移動し、…そして、見つけたのだ。彼らの、RO監査委員会の反省会会場を。


「こんばんは~」
 最初は何気ない一般ユーザーのつもりで、輪の中に入っていく。
 委員会の皆さんは、別に特別警戒するわけでもなく(多分)すんなりと私を受け入れてくれた。
 さてと、委員長は…いた。さすがにChaos鯖という事もあり、職業もノビだし髪の色も違っていたが、商人デフォの髪型は同じだ。
 さて、ここからさらに調べてみるには「アレ」をやってみる必要があるのだが…タイミングを外すと、気まずい事になるからなぁ、「アレ」は…。
 だが絶好の機会はすぐに訪れた。
 委員のBSさんが私の名を見て、「シーオッター乙」と言ったのだ。
 い、今だ!絶好の「アレ」のチャンス!!!

「(=<●>ω<●>=)ラコー様はみてる」

 一斉に湧き上がるショックエモの数々!あぁ、これこれ!この感じ!自分のボケでこれほどわかりやすく反応をもらえるなんて、あぁ、なんて、カ・イ・カ・ン!!これだから電波キャラはやめられない止まらな……って、違う!今はそんな場合じゃねぇ!
 我に返って、委員長の反応を確かめる。もし委員長=「あの人」であるなばら、今の顔文字を見た瞬間、私が誰であるかわかるはずだ。
 そして委員長は言った。
「そのAA…どっかでミタナw」
 委員長は私の事に気がついている!間違いない!
「やはり、委員長さん。あなたトールのケミクラブのあすかさんですね」
「!」
 私の推測が、100%の確証に変わった瞬間だった。
「私は同盟ギルドの…ラッコの体液です」




     (=<●>ω<●>(=<●>ω<●>=)<●>ω<●>=)



 委員会の反省会は、私がこの場に乱入した後も、何事もなかったかのように続けられた。
 主な内容は、今回のデモについての反省点と、今後の活動方針について。
 委員会の人たちも、これほどたくさんの人が集まるとは思っていなかったらしく、迷惑発言や枝テロ行為、また人多すぎ状態による重力場形成等、厄介な問題がいくつか出てきた。これらに対する対策や謝罪など、今回のデモの結果一つとっても、やらねばならないことが山ほどあるようだ。
 私も、流石にあまり深いところまでは突っ込めなかったけど、それとなく議論に参加したり、途中で一旦会場の様子を偵察し報告したりして、何となく委員会の輪の中に溶け込もうとした。
 しばらくの間反省会は続き、夜遅い時間になってようやく、今日はここらでお開きにしようという雰囲気になり、
「後の連絡はMSNメッセンジャーで」
 と、委員長含む数名が自分のアドレスをこの場に晒した。
 部外者の私がいるのにおいおい大丈夫なのかよと、内心思いつつも、私の中には委員長のアドレスを登録したいという気持ちもあった。
「|д゚)一応部外者なのですがどうしようかな私は・・・」
 だが一方で、私がこれ以上監査委員会に深く関わっていいのだろうかという葛藤も生まれた。リアル事情のこともあるし、それに何より……―――。
 でも、委員長はこう言った。
「ラコーならOkデスヨw」
 この時どうして委員長が、OKだと言ってくれたのか、私はよくわからない。
 これは数日後の話になるんだけど、私は委員長にある質問をした。どうしてあの時、私を受け入れてくれたのか。本鯖で知り合いだっとて、たった2~3度話したことがあるっていうだけなのに――。(そして、何故ある重大な秘密を私に打ち明けてくれたのか…)

「うーん…ラコー様だから?w」

 少しの間考えた後、委員長はそう答えた。
 私はその答えの真意はよくわからなかったけれど、それでも、委員長が私に心を開いてくれているという事はわかった。
 私は思った。応援したい。この人を応援したい。心から、そう思った。
 この人を、そしてこの人が立ち上げたRO監査委員会を、離れた場所からでもいいから見守りたい。
 私は胸の中に芽生えたそんな感情に突き動かされるように、監査委員会の外部協力者となることを決意したのだった。

「それにしても…」
 最初は、荒瀬に挑むボートを川岸から追いかけながら応援する…それくらいのつもりだったんだけど…。
 何故か数日も経たぬうちに、気付けば私もボートのド真ん中で彼らと一緒に荒瀬を渡っていたのだから、不思議というか、何というか。
「ま、乗りかかった舟、ということなんかねぇ」







 とはいえ、最終的に私は誰よりも早く、その荒瀬に飲み込まれ、沈んでいく事になるのだけれど――。




【続く。】

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第3話補足

この回の執筆者は僕ではなく、今回の主役であるらこー本人に書いて頂きました。如何でしたでしょうか?|・ω・)

軍曹@Fenrir | URL | 2007年05月21日(Mon)00:47 [EDIT]


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2012年11月01日(Thu) 16:52


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